PCR検査の不思議

日本ではPCR検査数を絞りすぎているとは思う.症状から見て新型コロナの感染が疑われるのに,なかなか検査を受けさせてもらえないという状況は良くない.しかし,検査数の増やしすぎはもっとまずいと思う.

検査数を増やすことに懐疑的な人の理屈は,政権寄りの詭弁に聞こえがちなものだが,そういう偏見を一度棚上げして考えてみよう.

 

神奈川県医師会
https://kanagawa-med.or.jp/corona_news/pcr%E6%A4%9C%E6%9F%BB%E3%81%AE%E7%89%B9%E6%80%A7%E3%81%A8%E9%99%90%E7%95%8C/

ここに書かれてあることの繰り返しになるが,私が特に注意しないといけないと思うのは「偽陽性」の方だ.偽陽性とは,本当は感染していないのに陽性と判定されることだが,このサイトでは1%くらいの割合で発生するとしている.

 

これはえらいことだ.現在,如何に多くの人がコロナウィルスに感染しているとは言え,圧倒的多数は未感染なのである.東京の例でざっくり言えば,1000万人のうち,確認されている累積感染者数は5000人だから,0.05%.実際の感染者数はこれの10倍と見込んでも0.5%である.

 

10000人に対してランダムに検査しまくるとしよう.この中の真の感染者数(人間には知りようがない.神様の視点で)を50人とする.

 

陽性と判定される人の数=真に陽性で陽性と判定される(①)+本当は陰性なのに陽性と判定される(②)

 

だ.①は上記のサイトによれば50人の70%で35人,②は9950×1%=99.5人であり,合わせて134.5人が陽性と出る.偽陽性の方がはるかに多い.

 

そして,偽陽性と判定されれば,他の感染者と一緒に隔離されて,本当に感染してしまう.実際にはもう一回検査するなど,もっと慎重に判断するのだろうが,ともかく,PCR検査をしまくって何が分かるかというと『PCR検査の偽陽性率』が判るに過ぎない.

 

母集団の大きさに対する真の感染者数の割合が,偽陽性の割合よりも十分に高い場合はこのようなことは問題にならないが,コロナウィルス拡散初期~現在のところ,圧倒的多数は未感染なのだ.

 

この事実を知りながら韓国やヨーロッパ諸国はなぜ検査を多量にしたのだろうか?結果として,真の感染者数を増やしてしまった(具体的には,人口に対する感染者の割合を,PCR偽陽性率程度にまで高めてしまった)のではないだろうか?

 

日本がPCR検査数を抑制していた理由は以上のようにわかりやすいが,他国において極端にたくさん実施してきた理由の方はむしろよくわからない.