人口減(2)

『老いてゆくアジア―繁栄の構図が変わるとき (中公新書 1914),大泉啓一郎』
この本の中で個人的に注目したのは,少子化のきっかけだ.「人口に占める子供の割合が多い=従属人口が多い」という事だから,貧しい国にとっては,その事が経済成長の足かせとなる.だから,各国政府は積極的に少子化政策を採り,人口ボーナスを現出させた(※).しかし,その結果,今となっては,韓国も台湾もタイも日本以上の少子国家となってしまった(私の勝手な理解を含む).という部分だ.
 
何だ.そういうことか.今でこそ,「少子・高齢化 --> 経済的自滅」という流れが深刻に議論されているが,高度成長期の日本も少子化による人口ボーナスの好影響を享受したわけだ.そして恐らく,政府も役人も経済的観点から少子化を肯定していたことだろう.(分かっている人には当たり前の事だろう.個人的な感想としてここに記している.)
 
今頃になって,保守派の中のインチキな連中が「少子化の原因は個人の利己的な幸福追求」であるかのごとく・・・そこまではっきり言わないまでも,その思い込みから逃れられないことを言外に滲ませるのは,理屈が通らない.
 
少子化のきっかけではなく,現時点の少子化の直接の原因は,要するに,子供が少ない状態で世の中が回っていること自体にあると思う.現代日本で多くの子供を持つのが難しいことは,改めてここで言う必要もない.収入,労働時間,教育コストという目に見えやすい事だけでなく,子育てする人に対する世間の風当たりや結婚へのハードルの高さという漠然としてものも・・すべてが万遍なく原因となっている.結局,多数派のために世の中は動く.
 
※ベビーブームから少子状態に移行させると,労働人口の割合がある期間急速に増加するということが言いたい.