オンライン授業の評判

こういう記事があった.
 
意訳すると,「メディアではコロナ禍のために登校の機会が減って学生の不満がたまっていると言われているが,そういう学生は多数派ではない」とのことだ.
 
メディアがどう言っているか,その全体像はよく知らないが,この調査結果は私の大学での実感とも合う.半年間で彼らはすっかりオンライン授業に適応してしまった.と言うより,一部の学生はその楽さ加減に味を占めたという感じか.そういうとちょっと口が悪すぎるかもしれない.
 
遠い自宅から長時間かけて満員電車で通う学生もいるし,祖父母と同居しているとか,保護者が老人施設に出入りする職業であるとか,コロナ感染を避けることに殊更気を使っている学生が結構いる.それに,これだけ世の中「コロナコロナ」と騒いでいる中で,多数派の大学生が大学に集いたいと思っているはずがない.加えて,少しだけ言いたいことを書かせていただく.
 
(1)いろんな科目で課題を出されるので,それに追われまくって大変だという話
 
良いことではないが,リモート授業の方が単位は取りやすい.だから大変と言うのはちょっと・・なのである.どういうことかと言うと、教室で行う試験以外で公正な成績評価をするのは難しい(注1)という事情による.PCで長文の記述式解答を作成させるという試験形式なら,学生間やネット上の文書との類似性チェックが可能だし,教科書の参照も許可できるかもしれない.しかし,数学や物理のような科目ではそうもいかない(注2).だから,極論すれば「レポート課題を提出したら合格」とせざるを得ず,それでは学力が担保できないから,課題を多く出す,という発想になる.この件には,今のところ唯一無二の正解がない.
 
(2)「提出した課題へのフィードバックがないから不安」という声
 
リンクを挙げた記事では,昔からそういうフィードバックは少ないから,リモート授業とは関係のないことだと書かれている.それもある程度当たっている.ただ,教員にもよる.私の授業では,レポートを添削して,正解するまで何回でも再提出させることにしているので,「フィードバックがないから不安」どころではなく,「なかなかOKをくれない」といってむしろ被害者意識を持っている.どのようなやり方でも不安がったり文句を言う学生はいるということだと思う.
 
 
注1:幸い,私のいる大学では,今回は教室で試験をすることができたので大事には至らなかった.
 
注2:ネットで検索したぐらいで解けてしまう問題なんぞ詰まらない.そんな詰まらない授業をやっとるから日本の大学は駄目なんだ,みたいな批判があるが,きれいごとである.それに海外の大学のことをそれほど知って言ってるのだろうか?Maxwell方程式でもNavier-Stokes方程式でも基本的な運用に独創性を求めても意味がない.誰がやっても解法は似たり寄ったりで,解は普通唯一なので,ネットで検索しても正解できるだろう.しかし,こういう科目において技術屋として身に付けたいのは,検索能力ではなく,世界観と数式の運用能力なのだ.自由な発想とか独創性はその後の話.