久しぶりにJRに乗った.私はドアの近くに立っていた.ボックス席の年配男性はこちらから顔が見える位置にいる.
列車がある駅に到着して,年配男性の向かいに座っていた女性が立ち上がってドアの方へ向かおうとした時,彼は「これあなたのですか?」という意味のことを女性に言った.耳が遠いのかやや大きい声.そのモノは着席中,彼女のそばにあって持ち物に見えていたのか,それとも立ち上がることによって隠れていたのが出てきたのだろう.しかし,実際は誰かの忘れ物だったらしい.女性は自分のものではないことを言ってそそくさと降車した.
これだけのことである.この女性は見たところ30歳前後だったが,返答の声色というか伝わってくる雰囲気は,軽い恐怖ないし迷惑を感じているような印象であって,少なくとも感謝は一切感じられなかった.確かに,女性の立場に立ってみれば,一つも利益にならない声掛けだった.面倒な返答,数秒の浪費,味わわされる恐怖.だが,彼は親切で言ったのだ.大いに感謝せよとは言わないが,リアクションの方向性は感謝であるべきだろう,と思ったのだ.
見知らぬ男性に声をかけられて,不信感と恐怖で頭がいっぱいになり,状況を客観視する余裕がなくなったと想像する.ここに深く長い溜息を吐いてしまう.いかにも器が小さく情けない.子供なら仕方ない.特に,女の子は小さいころから,何かの被害者にならないよう気を付けろと教えられて大きくなるわけだし.しかし,いい歳して・・・と思うわけだ.