来年度の授業の件
自分だけ知らない?
オンライン授業の評判
プロジェクト失敗のスピーチ
新規事業ばかりを担う事業部に属したことがあった.新しいプロジェクトがいくつか走っていたが,その中の最も大きなものは,家庭排水をどうにかするという製品(敢えて曖昧に書きます)で,会社の本業である機械製造とはかなり離れたものだ.これがどうしても軌道に乗らず,結局,事業部そのものをたたむことになった.原因は頻発する不具合を遂に収拾できず,大手ユーザーから出入り禁止を言い渡されたことだ.これは前代未聞の失態だ.
事業部解散が決まった少し後,部員が集まって飲み会を開いたとき,件のプロジェクトリーダーをしていた部長級の人が,スピーチの中で言ったことがこれ.
「・・・配管に脂肪酸塩が詰まるという不具合が中々なくなりませんで・・・手を変え品を変え対策を打ってみたのですが・・・ある時,脂肪酸塩って脂肪だろ?じゃあ,加熱すれば溶けて流れるだろうってんで,ヒーターを巻くことにしたんですね.実験もやって品質保証部の〇〇さんにも『ここまでやれば大丈夫だろう』って太鼓判押してもらって,送り出したんですが,実は『脂肪』じゃなくて『脂肪酸塩』だったって落ちなんですわ・・・これは簡単には溶けません!!・・・いやはや・・・」
これを聞いて,文字通りめまいがした.なにそれ?部長の思い付きがとどめだったの?
プロジェクト末期にはグループの雰囲気がかなり悪くなっていたことは知っていたので,ほんとに裸の王様だったんだなあ・・くらいの感想を抱いたものだった.
にしてもである.この間違いに気づくチャンスは余りにも多くあった.現場からサンプルを採取・分析した技術者や部長の指示で「脂肪」の実験を担当した技術者は言わずもがな,切れ者で通っていた部長自身も固唾を飲んで見守っていたのだから違和感を感じるはずだ.要するに,事業を終わらせるための一種の狂言だったのではないか,と思うわけである.
事業部が解散されても部員が失職するわけではないから,成功の見込みがない部署から解放してやろう,と部長は思ったのだろう.あるいは,事業を無理やり継続する場合の部員の会社員人生を背負う重圧には耐えられない,と思ったのかもしれない.だから,最も揉めない方法として自爆したというのが今の私の推測なのである.
これでもうまくいけば,VHS開発秘話みたいになったのだが,現実はそう甘くない.
オンライン授業とその愚痴
今年はコロナ禍のため,学生たちは前期キャンパスに来れなかった.その後,一時,コロナ禍より前の授業形態になったものの,第3波のために再び,学生が在宅で受講する所謂リモート授業になった.
リモート授業のやり方はいくつかあり,課題を与えておき自習させるというものもあれば,ZoomやTeamsを使ったオンライン授業もある.私の科目は後者だ.オンライン授業の悲喜こもごもがあるが,とりあえず二つ報告,というか愚痴を書かせていただきたい.
(1)オンライン授業だと学生は,驚くほど教員の話を聞いていない.
クラスには普通数十人いるので,全員が顔を配信するとアプリがまともに動かなくなる.だから,通常,学生側のカメラはオフにしてもらう.学生としても,わざわざ他人に姿を見られたくないので願ったり叶ったりというわけである.ログインだけして寝ているということもあり得る.なぜ,わかるかというと,早めに授業が終わり,多くはログアウトしても,幾人かはいつまでも残っているから.
そうは言っても,確信犯的に空出席する人は少数派で,多くはPCの前で受講してはいる.ただ,なぜだかわからないが,対面授業の場合よりも圧倒的に,右から左に抜けていることが多い.理解度云々ではなく,単純にスルーしているようなのだ.これは,簡単な連絡事項が中々周知されないことからわかる.対面授業において,受講者の反応を見て話し方を変る効果は,自分が思う以上に大きいのかもしれない.
それにしても,授業料を払っているのだし,もう少し意識を授業に向けてもいいんじゃないか?前期の間,大学に来れなかったことは気の毒だと思う.同士が集まる場を提供するというのも大学の機能であって,その部分が欠けたのだから,授業料返せというクレームが来てもおかしくはないが,差し当たり,そういう流れになっていないので,ほっとしてはいる.しかし,残された大学の機能であるところの,授業コンテンツを積極的に消化しようとしないのでは,こちらの申しわけなさも減殺されるというものだ.(注)
(2)オンライン授業を始めた当初は,データ通信量が少しでも減ることを期待して,自分のPCのカメラをオフにしていた.つまり,資料の画像と声だけを配信していたのだ.だが,以上のように,話が通じていないことが分かり,せめてもの対策として,こちらの顔を見せることにした.その方が,「人から話されている感じ」がして良く聞くようになるよ,というある先生のアドバイスに従ったのだが,まあ,効果があったとは思えない.
ところで,授業は,通信状態の悪い学生に配慮して,録画したものを後で公開することになっている.だから,授業動画を編集する.自分の顔が資料の横に延々と表示されるのを見るのは,いい気持がしない.と言うか,それほど長時間にわたって自分の表情を眺めるという経験は人生初である.その結果,自分の目つきが結構悪いことに気づいてしまった.最近,老眼が始まったので,目を凝らす癖が付いたからだろう,と思っていたのだが,そのことを妻に話すと「性格が悪いからじゃない?」と言う.冗談だと思って笑っていたのだが,その言葉は,後からじわじわと効いてきた.
確かに,目の問題だけなら,しょぼしょぼと目を瞬かせるとか,目を剥くとか,色々ありそうだが,私の場合,ふとした瞬間に嫌な表情が差し込んでくるという感じがするのだ.自己イメージは「お人好し」なのだが,知らぬ間に捻くれてしまったのか,それとも,授業で何度も同じ話をせねばならないことに嫌気がさしているのか・・・両方だろう.
注:
授業が詰まらんからだという批判もあるだろう.そんな時「詰まる」授業の代表として,マイケル・サンデル教授の白熱教室なんかが想定されているわけだが,彼の授業はある意味,おいしいとこ取りなのである.無論,討論会を盛り上げるにはそれなりのスキルと卓越した見識が必要だろうが,基礎知識を叩き込むタイプの科目では,あんな授業にはならない.
「知識の詰め込み」は不要にはならない.私が今ぼやいている件の科目は,エンジニアになるための基礎を作るためのもので,文章を書くために漢字の書き方を練習するに匹敵する.要するに地味な作業でつらい場合もあるが,それが不要になるのは,人類がAIに食わせてもらうだけの存在になったときだろう.
男女平等についてのもやもや
未来の暗示
占い好きというわけではないが,細木数子に関して少し思う所がある.テレビ番組でホリエモンと対談していたのを覚えていたので,少し調べてみたら,以下の記事が出てきた.
-----------以下引用-------
https://akio1.exblog.jp/44562/
ゆうべフジの25時間テレビをみてて思ったことを簡単に・・・
ライブドアの堀江社長と細木数子の対談の様子がどうも気になった。
堀江氏には大変申し訳ないが、私は倒産寸前の会社の社長が怪しい占い師に「うちの会社大丈夫だよね?」と追いすがっているという印象を受けてしまった。
彼は自社の株価について「今457円(だったかな?)だけど倍にしてみせる!」と強調して見せたり、細木にやり方によっては5倍になるかもとも言われると急に「絶対に5倍になるンですよね!」と言う態度を見せた。
----------引用終わり-------
多分,私が覚えているのはこれだ.2005年の25時間テレビだそうだ.さらに,2006年元旦の生放送中の対談では,細木数子はホリエモンに対し「「あんたの背中には龍がついているよ」と言ったそうだ.二人はこのころ,少し親交があったのだろう.そして,その後,証券取引法違反の疑いで逮捕されている.
このエピソードを,細木数子の占いが外れた,と解釈することもできるけど,どちらかというと,ホリエモンが細木数子に心理的に乗せられたという側面が強い気がする.当時,彼女はいろんな番組に出ていた.それらの番組の一つを何気なく見ていたら,六星占術の講座みたいなのがあった.自分が何星人なのかを調べる方法の解説があり,その後,その運命を細木数子が述べるという企画だったと思う.私も自分の星を調べ,彼女の宣託を聞いていたら,全然良くないのである.「願いは何一つ叶わない」とでも言われた気がする.この時,何か,自分の胸の中に黒い染みが広がっていくような薄気味悪さを感じて,慌ててテレビのスイッチを切った.これ以上聞いていたら本当に彼女の言うとおりになってしまう気がしたのだ.
この経験から,細木数子の占いは,未来を当てるというより,占った方向に導いてしまう,というものに近いのではないか,と思ったのだった.一種の暗示効果である.
暗示効果と言えば,話は飛ぶが,実現したいことをノートに書きつけておけば本当に実現するという話がある.2005年当時,ある技術(仮に技術A)の研究を始めていた.具体的には説明できないが,○○性能を10倍以上にしなければ実用化できないと考えられていた.そこで,私は,ノートに「1年後,○○性能が△△以上を達成する」という意味のことを書いてみた.そう簡単にできることではなく,ノートのこともしばらく忘れていたが,2007年早々に別の技術Bと組み合わせる方法で,本当に△△を達成してしまったのであった.これには,ボスも大喜びし,その後,かなり大きな補助金を獲得する助けにもなったのだが,まさに肝である技術Bがネックとなって実用化できなかった.
ここで,一つ教訓を得た.うまく手順を踏んで自分(あるいは他人に)暗示を与えれば,未来を思い通りに導くことはできる.ただし,望ましい形でそれが実現するとは限らない.ドラえもんや笑うセールスマンのように,願いが叶うことと,幸福になることは違うというストーリーを連想する.
ホリエモンに話を戻すと,細木数子からどんどん行けると太鼓判を押されて,その予言に沿うように無意識に行動した結果が,粉飾決算だったのではないか.
ホリエモンの話は正確ではないので,間違っていたら引っ込めますが,以上のようなことを思った次第.