ご入学

入学式があった.ひとまずおめでとうございます,と申し上げます.

 

ところで,入試に受かることの意味を少し考えてみた.あくまで個人的な考えで,法律に明記されたことではない.それに,書こうとしてナンだが,完全に納得しているわけでもない.でも,敢えて書いてみる.

次の二つの意味が含まれる気がする.

(1)我が校で勉強する能力があると認める

(2)我が校で勉強する権利を与える

(1)-->(2)という流れではあるんだけど,それぞれ独立した意味もあって突き詰めると2つは全然違ってくる.

多分,日本では(1)の意味合いが強い.だから,「どの大学に入学したか?」へのこだわりが,「学位を持っているか?」よりも強いのだ.そして,まじめに考えれば考えるほど,「入学させた以上,卒業させることが大学の責任だ」という考えに行きつく.なぜなら,能力を大学が認めたのだから.

どうしようもない学生を放っておくことは大学の責任放棄となり,不合格を出しすぎた教員は,お叱りを受ける.近年では特に,成績不振学生と保護者を交えて面談をするとか(ほとんど効果はない),落ちた人向けの授業をする(人によっては何とか合格してくれる)などの努力を「教員が」する.

(2)の方向で考えていくと,例えば,東大が,貧困家庭の生徒について合格基準を下げるなどの措置もあり得る.チャンスをやるからここで頑張って社会的に成功してくれ,ということだ.努力は「学生が」する.だが,今の世間の雰囲気ではあり得ないだろう.

 

令和

元号を最初に見た瞬間は美しいという印象だったのだが,その後しばらくして何かモヤモヤが...令が命令の令だとかいう件もなくはなかったが,そういう事ではなくて,モヤモヤの原因がやっとわかった.

 

凍・空気調

 

を連想するのだ.冷凍機とかエアコンとかはひとまとまりの技術分野になっており,まあ,そんな風にまとめて呼ばれることも多い.どうでも良い話だが.

 

明治,大正,昭和,平成と割と楽観的でわかりやすい元号だったが,令和はそれらとは違う感じがする.ややこしい時代を暗示しているのかな.

学業と就職

学生の就職支援がらみで,ある企業を訪問して人事担当者と会ってきた.こういう仕事は多分私立大学に限ったことだろう.わが校の学生に内定を下さってありがとうございます・次年度のご採用スケジュールはどんなもんでしょうか?という具合である.話してみないとわからないこともあるので,それなりに重要な仕事である.

さて,一応,どんな人材が望ましいか?という質問をすることになっている.特徴的な回答はめったにない.「積極性と協調性があって・・・つまりコミュニケーション能力があるということですね・・・学業成績は特に見ません」という答えは,よくあるものだ.「通り一遍ですが」と担当者も言っていた.

「学業成績は見ない」ということを,大学教員の前で悪びれもせず言う.冷静に見れば,おかしな話だ.それどころか,「バカでも採りますのでご安心ください.はっはっは」という馴れ合いのニュアンスさえある.ただ,話を聞いている私自身が,さもありなんと自然に聞いてしまうのである.情けなや.(さすがに「ただのバカ」という意味ではないことくらいは分るけど)

学業がどうでもよいなら高卒者を採ればよいではないか,と思うが,それは具合が悪いのだろう.

人口減(2)

『老いてゆくアジア―繁栄の構図が変わるとき (中公新書 1914),大泉啓一郎』
この本の中で個人的に注目したのは,少子化のきっかけだ.「人口に占める子供の割合が多い=従属人口が多い」という事だから,貧しい国にとっては,その事が経済成長の足かせとなる.だから,各国政府は積極的に少子化政策を採り,人口ボーナスを現出させた(※).しかし,その結果,今となっては,韓国も台湾もタイも日本以上の少子国家となってしまった(私の勝手な理解を含む).という部分だ.
 
何だ.そういうことか.今でこそ,「少子・高齢化 --> 経済的自滅」という流れが深刻に議論されているが,高度成長期の日本も少子化による人口ボーナスの好影響を享受したわけだ.そして恐らく,政府も役人も経済的観点から少子化を肯定していたことだろう.(分かっている人には当たり前の事だろう.個人的な感想としてここに記している.)
 
今頃になって,保守派の中のインチキな連中が「少子化の原因は個人の利己的な幸福追求」であるかのごとく・・・そこまではっきり言わないまでも,その思い込みから逃れられないことを言外に滲ませるのは,理屈が通らない.
 
少子化のきっかけではなく,現時点の少子化の直接の原因は,要するに,子供が少ない状態で世の中が回っていること自体にあると思う.現代日本で多くの子供を持つのが難しいことは,改めてここで言う必要もない.収入,労働時間,教育コストという目に見えやすい事だけでなく,子育てする人に対する世間の風当たりや結婚へのハードルの高さという漠然としてものも・・すべてが万遍なく原因となっている.結局,多数派のために世の中は動く.
 
※ベビーブームから少子状態に移行させると,労働人口の割合がある期間急速に増加するということが言いたい.

次の年号

行きがかり上,研究室の学生に焼肉をおごることになってしまった.よく食うのでつらい出来事だった.次の年号の話題になり,私など「焼肉とかじゃない?」と言って失笑を買っていたのだが,一人の学生が「世代間の断裂がある時代なので,みんなをまとめる様な意味のものになると思う」と述べやがった.脱帽.